流行っているの?ほったらかし投資本が売り場の先頭に?
本屋さんの雑誌コーナーでは「ほったらかし投資」に関する本が最前列に並んでいたのが目につきました。ほったらかしの投資とはどういう意味なのか?
確かにほったらかしで儲かったらすごいと思います。でも、いままでの経験上、ほったらかしていると、気が付いたときは利益なし!ということが多かったのがわたしの記憶。過去の投資方法で大失敗した後や、退職金の楽な運用先を探していると、この「ほったらかし」という言葉の魔力に取りつかれてしまうのでしょうか?
「ほったらかし」と言っていることの種明かし
ほったらかしという投資方法は株式投資に対して指南する内容がほとんどです。ほったらかし=簡単(楽な)投資という結びつきをイメージして本を読んでもらおうという作戦かもしれませんね。
投資のルールについて
まず、株式投資を行う場合は、銘柄選びとその売買の時期が重要な要素となります。このうち銘柄選びというものが初めて株式投資を行う人を翻弄します。何を基準に選んでよいのか?書店に並ぶ本を読めば、財務表、PER、PBR、一株当たりの資産等、沢山のわかりにくい言葉がでてきますし、ではどの基準で銘柄を選んだらよいのかという肝心なところは実は曖昧に書いてあることが多いと思います。雑誌では推奨銘柄を袋とじ等で記載している例も多いのですが、どの程度の確率で的中するのでしょうか。
投資本を買う人は、本に答えを見つけるために読んでいる場合が多い(わたしも昔はそうでした)ので、株式投資の書籍をたくさん読むとさらに混乱が深まるということもあると思います。でも、これは株式投資を本格的にはじめるとわかることですが、誰にでも有効な投資のルールなどありやしないのです。だから株式投資はおもしろいと言えるのですが、初めはなかなかこの「おもしろさ」を理解してもらえないと思います。
中にはそもそも株式投資自体に興味がなく、儲かればよいと考えている人もいるでしょうね。そういう方々にとっては、簡単かつ楽ができて儲かる手法があれば、万々歳なのでしょう。でも、簡単に儲かる投資なんて大体その裏があるものなので、自分が理解できていない簡単に儲けられる手法に乗るという発想は止めましょう。そんなに世の中は甘くないですよ!
ほったらかしの戦略
ここで「ほったらかし」のネタに入るわけですが、要するに単純に言えば何にも勉強せずに株式に指数連動して価格が変動するETF(上場投資信託)を買えといっているだけです。ただ、これだけです。もし、ここまでブログを読んでいただいて、エッ?って思われる方もいるかもしれませんが、これが「ほったらかし」の戦略なのです。これって、多くの投資家がふつうにやっている単なる「インデックス投資戦略」ですね。
ここで、ETF(上場投資信託)の説明を一応いたします。ETFはExchange Traded Fundの略称ですが、「証券取引所に上場している投資信託」を示します。日本では東証第一部に上場されている日経平均や225銘柄の指数の動きに連動するETFが有名で取引量が多くなっています。簡単に言えば株式市場で売買ができる投資信託です。ETFには様々な種類があり、外国株、原油や金との価格連動するタイプや、指数に2倍のレバレッジで連動するリスクが高いタイプなどいろいろあります。ただ、明らかに市場での取引量が少ないETFも存在するので、銘柄名称だけで選ぶことは絶対にやってはいけません。このETFですが、一般的に証券会社で売買可能なものに対してこんなメリット・デメリットがあります。
≪ETF≫メリット
- 証券口座を持っていれば、株と同じように売買可能
- 一般の投資信託は翌日の価格で約定、ETFは指値注文・即日売買が可
- 手数料が安い(ノーロードタイプの商品では同等のものもあり)
- 指数に連動するため、ボラリティーが個別銘柄に対して小さい
- ETFによっては、直接買えない特殊な商品にも投資が可能
≪ETF≫デメリット
- 値動きを平均化した指数連動型では、大きく利益を出しにくい
- 運用ファンドの信託報酬が含まれている(額は小さいが)
- 流動性が低いETFでは取引が成立しない場合がある
デメリットは無理やり感がある内容も含まれますが、ETFは安全でとても優れた商品であるということは間違えありません。ただ、これを買えば儲かるのかというとこれは保障できません。なぜなら、相場は常に変動するものだからです。ここに「ほったらかし」という言葉が投資にふさわしくないと考える理由があります。
リスク分散について
ほったらかし投資ではETFを買うことについて、当然、リスク分散の話がつきものです。投資の格言では「卵は一つの籠に盛るな」というものがありますが、複数銘柄、そして世界の市場指数に連動する銘柄等に分散投資を行います。これはリスク分散という観点では正しい判断ですが、儲けという観点では期待値が確実に薄まります。リスクとリターンはトレードオフの関係にあるため、リスクが小さい投資法を選べば得られる利益も少なくなることを想定すべきでしょう。
ほったらかしでは無責任・無関心な投資になる恐れ
ドル・コスト平均法について
株価が変動すればほったらかしで運用するETFの価格も動きます。その変動による影響を少なくするために、ドル・コスト平均法という分散投資の考え方を勧めることがあります。しかし、それでも株価の変動は必ず受けるわけです。この考え方は相場が上昇する際には、購入時期が遅くなるほど割高な価格で購入することになり、自分から儲ける機会を逃していることになります。将来的な相場の予測を行い、予測が外れたときの対処(出口戦略)までの方針を考えられる人であれば、このような手法が利益を小さくする可能性が高いこと(低リスク・低リターン)を理解しています。
また、株式投資の経験が多くある人であれば百も承知の事実ですが、相場は上がるときよりも下がるときの値動きが断然に大きいという特徴があります。上昇相場でコツコツと積み立てていたものが、暴落によってすべてマイナスに落ち込むことは現実に起こり得ることであり珍しくない現象でしょう。どんな方法をとったとしても、何も考えずに利益を出すということはできません。
しかし、ドル・コスト平均法が優れている点は、長期的な社会の発展を考えた長いスパンでは株価は上昇してきているという事実があり、暴落が起きたとしても継続的な購入をすることで購入単価を下げて、長期的には利益をもたらすこと。これは今までの経験に基づく有効性が高い方法であり、今後も発展する国では通用する可能性が高いと思います。しかし、今の日本にはどういった未来の可能性があるのでしょうか?『成熟した社会・十分な社会資本ストック・少子高齢化による人口減少』等、日本国内の経済が昭和の高度成長期のように大きく発展していくという未来を予想することは少々難しい状況です。
日本の未来はどうなるのか?
日本の上場企業はこの状況を打破するため、国際企業への変貌を成し遂げようと頑張っている企業が多いですね。しかし、海外進出は何も日本の企業に限ったことではなく、海外進出は世界規模の競争に巻き込まれる大海原へ舟を漕ぎ出していることにほかなりません。日本の天下の大企業ですら、決して長期的な安泰を楽観できる状況にありません。
ほったらかし投資を行うためには、まずは手を出しやすい日本市場の株を主に運用することになると思いますが、そんな日本の株式市場に「ほったらかし」でお金を預けっぱなしで大丈夫だと本当に思いますか?
今後の日本の株式市場は、長期的に大きく右肩上がりが続く上昇場面は自分が生きている間は出てこないだろうと予測します。ただ、これは株価が上昇しなということではなく、上昇と下降を繰り返す小さな波と大きな波の反復が続くと考えます。企業の業績も勝ち組と負け組の差が開くことが多くなり、またこれも永続的な状況は続かず、浮き沈みが多い経済社会となるかもしれません。そうなれば、日経平均株価等を指数とするETFは上昇が続いていくという想定が難しくなります。現に失われた10年と言われる時期には日経平均株価は約4万円からわずか9か月で約半分の価格帯へ、そしてその後は7千円台まで下がっていきました。このときにドル・コスト平均法を「ほったらかし」でやっていたらどうなっているのでしょうね。
日本の株価が大きく上がる条件があるとすれば、極端な円安となった状況が考えられます。これは最も恐れる日本の国債の信用が剥がれ落ちたときに起こる可能性があります。でも、これは日本の経済にとって危機的状況であり、円の価値が大きく毀損してハイパーインフレに陥る危険性が高い情勢。そもそも、日本に自分の金融資産をおいていたら、幾ら増えても日本のお金には価値がないという最悪の結果をもたらすことになるかもしれません。危機的な状況が差し迫る前に、マネーリテラシーが高い人々は「ほったらかし」とはせずに、安全な国や資産へ自分の富を移し終っていることでしょう。
ほったらかしがダメな理由
日本の経済が危機的な状況になることなど、決してあってほしくありません。でも、経済の状況に興味を持って投資と接していなければ、気が付いた時には手遅れということは十分に考えられるでしょう。「ほったらかし」の発想はそのような世の中の流れを読み取る臭覚を奪ってしまう危険性が高く、特に若い世代の方にはやってほしくない投資方法だと考えています。
いつまでもほったらかし?
投資する目的はなんでしょうか?利用する目的があるお金でしょうか?投資はお金に働いてもらいお金を生み出すことなのですが、働いてもらっていてもすぐに成果がでないことは珍しくありません。そのようなときに耐えられる忍耐力があるかどうか、これが投資における成否を分けると経験的に覚えました。
そういう観点ではほったらかしておくことが、結果的に成功を収めることはあると思います。ただ、これは戦略的な観点からのほったらかしである必要があり、これを出口戦略と言います。要するに「ほったらかし」と言っても実は「ほったらかし」ではない。たとえば、損が生じた場合はどこまでなら許容できるのか?どれだけ利益が生じたら次はどういう作戦に移るのか?これは一度決めたことを守らなければならない訳ではなく、その時々の情勢に合わせて投資作戦を立て直すのが重要です。
ほったらかしにしたとしても、いつまでに資金をいくらまで増やしたいという希望はありませんか?その目標を達成するためには、一定の間隔でポートフォリオの組み直しや資金の配分の検討が必要となるはずで、しっかりと着実に投資に関する知識向上を図っていく必要があるでしょう。
本当の「ほったらかし」でよいのはどういう人たちか
みなさんはどれだけの利益を出したいと考えていますか?仮に一年間で10万円を20万円にしたいとすれば、それは年利100%となりますがそのような美味しい想定は現実的には起きにくいです。株式投資だと、概ね年利で20%~30%を目標とされている人が多いと思います。10万円が資金だとすればこれが一年で13万円になるということです。この話をすると、それしか株式投資では増やせないのか?という質問を受けることがあります。これは、投資をしようと思っている本人がシュミレーションをせずに、漠然と利益が出ることだけをイメージしているからなのです。自分が目標とする年利がどの程度であるのかは、投資スタイルを考えるうえでとても大事な情報です。
では、仮に資金が10億円あったらどうでしょうか?年利30%でもし運用できたら利益は3億円です(税金の話は省略します)。年間の利益が3億円だったら多くの人が満足するのではないでしょうか。結局のところ、お金に働いてもらって稼ぐことになるため、元手の資金が潤沢であればあるほど、利益を上げられる可能性が広がります。
でも、潤沢な資金がある人はリスクの高い投資活動をする必要性がないという人も多くいます。そういった人々は、安全なシステムに資金を預けるか貸すことで、数%の手数料(利息)をもらうという方法をとるわけです。仮に2%の金利をもらえるとしても10億円であれば、2千万円の利益に相当します。また、もう少しリスクをとっていくのであれば、値動きが比較的少ないJリート(上場不動産投資信託)を活用すると、3%~5%程度の配当金がもらえるのでもう少し儲けを増やせます。
ある程度「ほったらかし」で投資ができるのはこのような資産家の方たちであって、毎日の生活のために働いているわたしのような人物ではありませんね。
まとめ
ビニナーの投資家にとって、ほったらかしで儲けられるという話は魅力的に違いありませんが、資産家の資金運用でもなければそんな現実は実際にありません。「ほったらかし」に関係する書籍に書かれる情報は間違っていませんが、必ずしも正解ではありません。ここでいう正解とは個人の生き方や資金量、今後のビジョン、許容するリスクによって変わります。読者様自身がしっかり内容を理解して、活かせるところだけをエキスとして取り出す必要があります。
このブログで書いていくトレステによる株の自動売買だってほったらかしではありません。確かに株の売買はシステムトレードに任せますが、そのストラテジーを選ぶのは自分ですし、どの程度の資金量を投じるかを決めるのも自分です。
でも、トレステによる株の自動売買は、ほったらかし投資ではないにしても、だれにでもはじめられるお手軽な投資手法であることは事実です。自分が忙しくたって、設定したストラテジー(戦略)が忠実に、そして人間のように感情で流されることなく株式売買を代わりにやってくれるのですから。
株式投資は言い換えれば持久走のようなものです。持久走はやみくもに最初から突っ走れば最初は順位が良くてもすぐにバテテしまい、ゴールまでたどり着くことは極めて困難です。長い先にあるゴールへ一番早くたどり着くためには、その途中におけるストラテジー(戦略)が必要となります。そのストラテジーも一回のトライでは方針が定まらないでしょう。また、走るコースや季節、気候に基づく「外部環境」への戦略も当然必要でしょう。特に天候はめまぐるしく状況が変わることもあります。いろいろなケースを考えながら何度か練習を重ね、自分に最も合うペースをつかみ、最高のタイムが出せるように走り方の訓練を積み重ねるわけです。株式投資も同じで、自分の能力だけでなく、外部環境にも大きく影響を受ける持久走と同じようなものであることを肝に銘じて、取組む心構えがまず大事です。
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